「マルセーユの人々、ときどき洋次」、今井翼主演「音楽劇マリウス」2017年3月某日
⭐️ネタバレあり。閲覧注意⭐️
複数回の観劇を経て、やっと落ち着いて観られるようになりました。
エンターテイメントとして、誰のファンでなくても一般的に楽しめる舞台です。親子で観劇されるとよろしいのではないでしょうか❤️
まだまだ観に行くので総括めいた感想は控えますが、ランダムに主だった役者さん方への感想を。
⭐️セザール:マリウスの父/柄本明
さすが!
セザールが1番実際のMarseillais像に近いのでしょう。
原作脚本のCésarみたい⭐️豪放磊落な明るい激情家の人情家、少しおとぼけで愉快なセザールを、熱烈に自由自在に演じていらっしゃる。凄い!凄い!笑わせて、ホロリとさせてくれます。
山田オリジナルの「音楽劇マリウス」は、マリウスの成長、親子の情愛(セザールとマリウス、パニスとマリウスの子、オノリーヌとファニー)にフォーカスしていると思われます。最終幕、セザールが語る「親子の情愛」の話が物語の山場。
柄本さんがいらっしゃるから、舞台がピリリと締まります⭐️
再見では、初日聞き取りにくかった声が出ていました。一部、わざと聞き取りにくく演技した部分もあったと思うけど。マイクの調整のせい?
こぶちゃーん!香葉子も泰葉もオレンジ色の着物(林家と云えば、ちゃ〜ざ〜のこんちゃん、秩父のたい平さんが目に浮かぶ。)も見えなかったよ。根津もオムライスも見えなかったよー!
セザールの幼馴染、のび太感に溢れた気の優しい面白パニスで良かった。
脚本が違うから仕方ないのだけど、原作のパニスには小金持ちになった頭の良さとファニーを教え諭す包容力があります。
「何万フラン持っている。」というオノリーヌとの会話があるけれど、あそこにパニスの頭の良さを感じさせる台詞が1言、2言あると良かったかなと思うわ。そしたら、パニスがただ優しいだけのお金持ちじゃなくて、キャラクターに深みが出るでしょ?
もう1つ言うと、パニスの見せ場、マリウスにパニスがマリウスの子と知りながら育てている我が子を「たった1人の私の子供なんだよ!」と掴み掛かり、訴える場面。
この場面には、原作では伏線があります。パニスのご夫婦は不妊で子供を持てなかったのです。でも、パニスは子供が欲しくて、お店の看板にいつか付けようと「◯◯&fils」(英語の◯◯&son 誰々と息子のお店の意)のアルファベットの飾り板をずっと持っていたの。パニスは子供を持てなくて、徐々に生きる張り合いを失っていたとも言っていた。
そういう伏線エピソードを少しでいいから台詞に紛れこませてくれていたら、パニスの見せ場、こぶちゃんの演技はもっともっと観客の胸に迫るはずなの。
って、こぶちゃんじゃなくて、先程から私、洋次に言ってるわね。
⭐️オノリーヌ:ファニーの母。/広岡由里子
きゃーっ!!私のオノリーヌ!!!オノリーヌ最高です❤️原作の娘思いで計算高いはすっぱなオノリーヌのfondをそのままに、最高にコケティッシュでチャーミングに仕上げてくださいました❤️❤️
何て言うのかしら、舞台を走り回ってるわけではないのだけれど、縦横無尽に伸び伸びと演じてらっしゃる感じが気持ち良い。
さすがに原作のままのオノリーヌでは、毒気がきつすぎて日本人には受け入れ難かったと思います。それをなんとまぁ素敵な形にしてくださったことか❤️
オノリーヌはこんなにチャーミングなママンだったのね(๑˃̵ᴗ˂̵)
オノリーヌに関しては、山田脚本(台本)で人となりを過不足なく伝える台詞が入っているのよね。パニスに言う「うちには名誉ってもんがあるんだから。」の台詞は、勿論逆説的な意味。港の魚屋、名誉はない。その後に続く、若い頃はイタリア男と…の件で、オノリーヌ、ファニーのいる社会階層、生活はだいたい分かる。
クロディーヌ田中利花さんとの掛け合いも最高。クロディーヌがアドリブを入れてきているのかな?少し変わってきています。
男性陣の掛け合い部分は、飄々とした落語的世界、山田洋次のテンポです。しかし、オノリーヌとクロディーヌは女性の生理に合った(私に合った、かな?)テンポ。リズミカルで洋物らしい。リズム、リズム!
ファニーの妊娠が知られる場面、舞台セットと物語の展開上、オノリーヌ、クロディーヌに加え、パニスも入って結婚話まで進んでしまいます。
でも、原作では、女3人の長い良い場面なの。
妊娠を告白するファニー、激怒するオノリーヌ、たしなめるクロディーヌ。感情の爆発から、意地汚いような損得、見栄、超現実的な今後の生活の話、人間が綺麗事だけでは生きていけないとよく表れている場面。ファニーが母親として自覚を持ち始める、大人になる場面でもある。
しかし、今回、山田ファニーは往年の日本映画ヒロイン、可憐なだけのお人形に改変されている為成長しません。ずっと一本調子。
「片親の方が良い子に育つっていうしね。」(クロディーヌだったかな?)で3人のシーンはしみじみと終わる。
山田舞台では完全オリジナル、台詞も違えば、登場人物、場面の役割も違う別物のシーンですが、オノリーヌとクロディーヌの掛け合いは原作の女3人の場面をしっかり内包している気がします。
何故かしら?ほんとは女3人のシーンは台本にあったけど、父と子の情愛の話に尺を取るから、削られたとか?広岡さん、田中さんが原作お読みになっている?
感情の爆発、今後の生活に向けた打算、生きる為の力、そのようなけして綺麗ではない人間の姿、苦い味を笑いでまさに包んでくれています。
オノリーヌとクロディーヌの場面に歌はないけれど、お二人の台詞回し、息遣いでリズムが聞こえる。明るくお洒落な雰囲気があります⭐️
広岡さん、田中さんで、ファニーが妊娠告白をする女3人の場面が見たかったな⭐️お二人なら、あの場面をまさに「苦い味を笑いで包んで」なおかつ、その笑いが何とも明るくチャーミングになるはず❤️
本来なら、FannyがLa penseurse(考える女性)に変換する場面でもある。山田監督によって、可憐なだけの狂言回しにされたファニーに、少しでも「考えている」台詞を与え、人形から人間にしてあげて欲しいとも思います。うん、洋次にまた言ってる。
本日は2回公演⭐️
銀座でのお買物を中断して、日比谷日生劇場今井翼主演「音楽劇マリウス」に是非是非❤️ご家族で観に行かれてはいかがでしょう?親御さんへの観劇プレゼントにも。
観劇後のお食事では、親子のお話も深まることでしょう。
13時、17時開演です❤️